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被害届を警察に受理してもらうためのコツ ― 特に「詐欺」で渋られる現実と対策

  • 7fuku-law
  • 8月28日
  • 読了時間: 5分

こんにちは。今日は「被害届」の受理について、特に詐欺事件を中心にお話ししたいと思います。

「犯罪捜査規範」や「警察庁の通達」には、被害届は原則として受理しなければならない、と明記されています。にもかかわらず、実際に警察署に行ってみると、「これは民事だから」「証拠が足りないから」と言われて、なかなか受理してもらえない…。特に「詐欺」被害では、そうした経験をした方が多いのではないでしょうか。

今回は、被害届に関するルールと、実際の運用のギャップ、そして被害者としてどう動くべきかを、できるだけわかりやすく整理してみます。


1 法律や通達では「原則受理」がルール


まず建前の確認です。


  • 犯罪捜査規範61条1項には、「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。」と書かれています。

  • 警察庁通達『迅速・確実な被害の届出の受理等について』でも、「明白な虚偽、著しく合理性を欠く場合を除き、原則として即時受理」とされています。


つまり「管轄外だから」とか「証拠が不十分だから」という理由で受理を拒むことは、建前上できないはずなんです。もし受理しない場合でも、担当警察官は届出の内容や状況を記録して、所属長に報告する義務があります。

これが「ルール上の世界」です。


2 ところが実務では渋られる ― 特に「詐欺」


ところが実際に行ってみると、簡単には受理してくれないことが多い。特に詐欺です。

たとえばネットでの投資詐欺、出会い系やマッチングアプリを使った送金トラブル、あるいは「貸したお金が返ってこない」ケース。被害者にとってはまさに「騙し取られた」と思う出来事でも、警察署ではこう言われがちです。

  • 「それは民事問題だから、弁護士に相談してください」

  • 「証拠がないので、被害届は受けられません」

どうでしょう? 心当たりがある方、多いと思います。

警察側の本音としては、「これは捜査に値するのか?」「人員や時間を割く意味があるのか?」という視点で見ているのが実情です。


3 背景にある「警察の人員不足」


ここで触れておきたいのが、警察の人員不足という側面です。

表向きは全国で大勢の警察官が配置されていますが、実際の交番や警察署の現場は常に人手不足。凶悪事件や交通事故対応、生活安全課の事件、地域パトロールなどで日々追われており、「詐欺っぽいけど民事かもしれない案件」にまで手を回せないのが実情です。

特にネット詐欺や投資詐欺は、全国で膨大に発生しているため、受理した瞬間に膨大な事務作業や照会業務が発生します。被害届が1件増えるだけで、捜査書類や本部への報告義務がついて回る。現場からすれば「正直これ以上抱え込めない」という悲鳴があるのも事実です。

もちろんそれで「受理しない」は制度上許されませんが、現場の事情を知っておくと、なぜあれほど受理を渋るのかが少し見えてきます。


4 受理されやすくするための工夫


ではどうすれば被害届を受理してもらいやすくなるのか。ここが一番実務的に大事なポイントです。

(1)証拠を整理して持参する

まずは「これは詐欺の構成要件にあたる」とわかる形で証拠を揃えましょう。

  • 振込明細(送金先口座)

  • 契約書や申込フォームの控え

  • SNSやメールのやりとり(スクリーンショットでも可)

  • 相手が虚偽の事実を述べていたことがわかる資料

これらを時系列でまとめておくと、警察官も理解しやすくなります。

(2)通達をそのまま伝える

担当者が渋ったら、「犯罪捜査規範61条や警察庁通達により、原則として即時受理されるはずです」と冷静に伝える。「明白な虚偽でない限り、受理義務がある」というフレーズは効果的です。

(3)受理拒否時の義務を確認する

それでも「受けられない」と言われたら、「では、受理しなかった理由は所属長に報告されるはずですが、記録は残りますか?」と聞いてみましょう。ここで急に態度が変わるケースも少なくありません。


5 民事と刑事の併行戦略


もう一つ忘れてはいけないのが、「刑事と民事は別」ということ。

詐欺のような案件では、刑事で加害者を処罰してもらうことと並行して、民事で損害賠償を請求する必要があります。仮差押え、訴訟、強制執行など、民事的な手段で回収を図ることも同時に考えるべきです。

被害届を出したからといって、すぐにお金が返ってくるわけではありません。刑事の世界は、自分で動けるわけではありませんが、民事の手段では、自分から仕掛けて主役になることが出来るのです。


6 まとめ ― 被害届を「武器」として使う


ここまでを整理すると、こうなります。


  • 被害届は原則として受理されるべき(規範61条・通達あり)

  • 実務では特に詐欺で渋られる傾向が強い

  • 背景には警察の人員不足や業務負担の問題がある

  • 受理してもらうには、証拠整理+通達の引用が効果的

  • 拒否された場合は、報告義務を指摘する

  • 刑事と並行して、民事回収も必ず検討する


「どうせ受理されないんでしょ」と諦める前に、まずはルールを盾にして粘り強く対応してみてください。

警察にとっても、被害者から法令や通達をきちんと指摘されると無視できなくなるものです。

もちろん現場の人員不足という現実はありますが、それは被害者が我慢すべき理由にはなりません。だからこそ、被害届をきちんと提出し、声を届けることが大事なんです。

 
 
 

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